「始めること」よりも、「やめること」の方が難しい
6種複合免疫療法の取り扱いを終了しました
医療の世界では、毎年のように新しい検査や治療法が登場します。
特に自由診療の分野では、保険診療だけでは十分な選択肢がない患者さんに対して、「何かできることはないだろうか」という思いから、新しい治療法を検討することがあります。
当院でも、そのような思いから「6種複合免疫療法」を導入し、がん治療における選択肢の一つとして提供してきました。
私自身、この治療には期待をしていました。
しかし、治療というものは「理論的に良さそう」「作用機序に納得できる」というだけでは、患者さんにおすすめし続ける理由にはならないと考えています。
実際の患者さんを診て、経過を追い、その変化を確認する。
そして何より、
「自分や自分の家族にも、この治療を同じようにすすめるだろうか?」
私は自由診療の治療を見直す際、いつもこの問いを大切にしています。
今回、これまでの当院での臨床経験を振り返り、慎重に検討しました。
その結果、6種複合免疫療法については、残念ながら私が当初期待していたほどの治療効果を十分に確認することができませんでした。
もちろん、これは免疫療法そのものを否定するものではありません。
また、これまで治療を受けられた患者さん一人ひとりの経過や、治療の意味を否定するものでもありません。
医学的な治療効果は、患者さんの病状、がんの種類、進行度、体質、併用している治療などによって大きく異なります。
しかし、自由診療は患者さんに少なくない費用をご負担いただく治療です。
だからこそ私は、
「可能性があるから続ける」
だけでは不十分だと考えています。
患者さんに積極的におすすめできるのか。
費用に見合う可能性を感じられるのか。
そして、自分自身が納得して治療を提供できるのか。
これらを改めて考えた結果、当院では6種複合免疫療法の新規取り扱いを終了することにしました。
新しい治療を導入することは、ある意味では簡単です。
しかし、一度始めた治療を見直し、「やめる」と判断することは、実はそれ以上に難しいことがあります。
それでも私は、医療機関として大切なのは「治療メニューを増やすこと」ではなく、自分たちが本当に納得して患者さんにすすめられる医療を残していくことだと考えています。
医学は常に変化しています。
現在は十分な結果が得られない治療でも、今後、新しい研究や技術によって大きく進歩する可能性があります。
その時には、また改めて検討すればよいと思っています。
当院ではこれからも、新しい医療に関心を持ち、積極的に学び続けます。
同時に、実際の臨床経験を大切にし、
「始める勇気」と「やめる勇気」
その両方を持ちながら、患者さんにとってより良い医療を考え続けたいと思います。
【文責・医学博士】 高木 輝秀