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小児の頭痛

小児の頭痛

小児の頭痛は一般的な症状であり、その発生頻度は高い。疫学研究によると、小児の約60%が学童期までに頭痛を経験し、慢性頭痛を有する小児は5〜10%に達する(Lateef et al., 2013)。頭痛は小児の生活の質(Quality of Life, QOL)や学業成績に影響を及ぼし、適切な診断と治療が求められます。

症状について

小児の頭痛は大きく一次性頭痛(片頭痛、緊張型頭痛など)と二次性頭痛(感染症、頭部外傷、脳腫瘍などによるもの)に分類される。

片頭痛(Migraine)

片頭痛は小児頭痛の約10%を占める(Lewis et al., 2017)。特徴的な症状として、拍動性の頭痛、片側性または両側性、悪心・嘔吐、光過敏・音過敏が挙げられる。小児では成人と異なり、頭痛の持続時間が短く(2~72時間)、両側性であることが多い。

緊張型頭痛(Tension-type headache, TTH)

学童期以降に多くみられ、非拍動性の圧迫感を伴う頭痛が特徴である。持続時間は30分~7日間であり、片頭痛と異なり悪心や嘔吐、光・音過敏は少ない(Oskoui et al., 2019)。

群発頭痛(Cluster headache)

小児ではまれ(有病率 < 0.1%)であり、片側性の強い眼窩周囲痛と自律神経症状(流涙、鼻閉、発汗)を伴う。発作は数週間にわたりほぼ同時刻に生じる(Evers & Marziniak, 2010)。

診断について

小児の頭痛の診断には、国際頭痛分類(ICHD-3, 2018)が用いられる。診察では問診と身体診察を中心に行い、必要に応じて画像検査や血液検査を実施する。

重要な鑑別診断

二次性頭痛の除外(レッドフラッグ症状)

  • 突然発症(くも膜下出血など)
  • 早朝や夜間に増悪する頭痛(脳腫瘍、髄膜炎)
  • 神経学的異常を伴う(脳炎、脳腫瘍)
  • 外傷後の持続性頭痛(慢性硬膜下血腫)

補助検査

頭部MRI/CT

  • 二次性頭痛が疑われる場合に施行

治療法について

治療は、急性期治療と予防治療に分けられる。

急性期治療

片頭痛

  • 軽度~中等度:アセトアミノフェン、イブプロフェン(Lewis et al., 2017)
  • 重度:トリプタン系薬剤(スマトリプタン点鼻薬)

緊張型頭痛

  • NSAIDs(イブプロフェン、アセトアミノフェン)

予防治療(慢性頭痛への対応)

薬物療法(重症例に限る)

  • 片頭痛予防:β遮断薬(プロプラノロール)、抗てんかん薬(トピラマート)
  • 緊張型頭痛:抗うつ薬(アミトリプチリン)

非薬物療法(第一選択)

  • 生活習慣改善(睡眠・食事・水分摂取・ストレス管理)
  • 認知行動療法(CBT)

自然経過について

片頭痛や緊張型頭痛の経過は個人差が大きいが、一般的に思春期以降に症状が改善することが多い。

片頭痛

約50%の小児片頭痛患者は成人期までに軽快する(Bille, 1997)。ただし、一部は成人片頭痛へ移行(慢性片頭痛化リスク:約10%)。

緊張型頭痛

一般的に小児期に始まり、成長とともに減少する傾向。成人期まで持続するケースもあるが、頻度は減少する。

群発頭痛

一度発症すると成人期にも再発することが多い(Evers & Marziniak, 2010)。小児例はまれです。当院では経験ありません。

緊張型頭痛とスマホ使用時間について

緊張型頭痛とその特徴

緊張型頭痛(Tension-Type Headache, TTH)は、小児および成人において最も一般的な一次性頭痛の一つである。学童期の約10~20%、成人の30~78%が経験すると報告されている(Stovner et al., 2018)。
小児のTTHは、頭部全体または後頭部に鈍い圧迫感を伴う痛みが特徴で、ストレスや姿勢の影響を受けやすい。また、長時間のデジタルデバイス使用が誘因となる可能性が指摘されている。

スマホ使用時間と緊張型頭痛の関連

近年、スマートフォン(スマホ)の使用時間と頭痛の関連を示唆する研究が増えている。特に、小児および思春期のTTH患者では、スマホの長時間使用が頭痛の発症・悪化因子として重要視されている。

(1) スマホ使用時間と頭痛の有病率

2019年の研究(?a?maz et al., 2019)では、スマホを1日3時間以上使用する中高生は、使用時間が1時間未満の生徒と比較して緊張型頭痛のリスクが2.1倍高かったと報告されている。
また、韓国で行われた調査(Kim et al., 2020)では、2019年の研究(?a?maz et al., 2019)では、スマホを1日3時間以上使用する中高生は、使用時間が1時間未満の生徒と比較して緊張型頭痛のリスクが2.1倍高かったと報告されている。
また、韓国で行われた調査(Kim et al., 2020)では、

  • スマホ使用時間が4時間以上の学生では、TTHの有病率が47.2%
  • 1時間未満の学生では、有病率が22.3%

と、明らかにスマホ使用時間が長いほど頭痛の発症率が高い傾向が示された。

(2) 画面を見る姿勢と頸部負担

2019年の研究(?a?maz et al., 2019)では、スマホを1日3時間以上使用する中高生は、使用時間が1時間未満の生徒と比較して緊張型頭痛のリスクが2.1倍高かったと報告されている。
また、韓国で行われた調査(Kim et al., 2020)では、スマホ使用時の姿勢も、TTHの発症に影響を与える可能性がある。特に、スマホを長時間使用することで前傾姿勢(頭部前方位姿勢)が強まり、頸部筋肉の緊張が持続することが問題視されている。

  • 頭部の前傾角度が15度傾くと、首にかかる負担は約12kg(成人の頭部重量の約2倍)
  • 45度傾くと、負担は約22kgに増加(Hansraj, 2014)

この負担が肩や首の筋緊張を高め、TTHの持続時間や頻度を増加させる要因となる。

(3) 眼精疲労との関連

スマホの長時間使用は、眼精疲労(Digital Eye Strain, DES)を引き起こし、それがTTHの悪化因子となることも報告されている。特に、ブルーライト暴露が自律神経系に影響を及ぼし、交感神経優位の状態を作り出すことで、筋緊張を助長する可能性が指摘されている(Rosenfield, 2016)。

スマホ使用による緊張型頭痛の予防策

スマホ使用とTTHの関連が示唆される中、以下の対策が推奨されている。

スマホ使用時間の管理

  • 1日のスマホ使用時間を2時間以内に制限する(American Academy of Pediatrics, 2016)
  • 連続使用は30分以内にし、1時間に1回の休憩を取る

姿勢の改善

  • スマホ画面の高さを目の高さに合わせる(頭部の前傾を防ぐ)
  • 椅子に深く座り、背筋を伸ばして使用する
  • 画面を見るときは20分に1回、20秒間遠くを見る(20-20-20ルール)

眼精疲労の軽減

  • ブルーライトカットフィルターやナイトモードを使用
  • 照明環境を整え、暗い場所でのスマホ使用を避ける

運動・ストレッチ

  • 頸部ストレッチ(特に僧帽筋・胸鎖乳突筋のストレッチ)
  • 肩こりを予防するために適度な運動(ウォーキングや軽いストレッチ)

まとめ

スマホ使用時間の増加は、小児や思春期の緊張型頭痛のリスクを高めることが近年の研究で示唆されている。1日3時間以上のスマホ使用でTTHリスクが約2倍に増加するなど、明確な関連が報告されており、適切な使用時間の管理や姿勢の改善が重要である。今後、より詳細なメカニズム解明と、予防策の確立が求められる。