睡眠外来
睡眠時無呼吸症候群(SAS)

「睡眠時無呼吸症候群」とは、寝ている間に呼吸が何度も止まってしまう病気です。このため、しっかり眠ったはずなのに日中に強い眠気を感じたり、疲れが取れないことがあります。放っておくと健康に大きな影響を与えることもあります。
睡眠時無呼吸症候群をセルフチェック
以下に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のセルフチェックに役立つ10項目の症状を挙げました。これらの症状が多く当てはまる場合、SASの可能性がありますので、医師に相談することをおすすめします。
1.大きないびきをかく
家族やパートナーから、寝ているときに大きないびきをかいていると言われる。
2.息が止まるような感覚がある
夜中に突然目が覚めて、「息が詰まる」や「息が止まった」と感じることがある。
3.日中に異常に眠くなる
昼間に強い眠気を感じたり、会議中やテレビを見ているときに居眠りしてしまうことが多い。
4.朝起きたときに疲労感が残る
十分な時間寝たはずなのに、朝起きたときに疲れが取れていない、あるいはだるさを感じる。
5.集中力の低下
集中力が続かず、記憶力の低下を感じる。特に仕事中や日常生活でのパフォーマンスが下がる。
6.朝の頭痛
朝起きたときに頭痛がすることが多い。
7.口の乾き
朝起きたときに口が乾いている、または喉が渇いている。
8.夜中に頻繁に目が覚める
夜中に何度も目が覚めることが多く、深い眠りに入れない。
9.トイレに行く回数が多い
夜間にトイレに行く回数が多くなる(夜間頻尿)。
10.パートナーから睡眠時の異常を指摘される
家族やパートナーから、「寝ているときに息が止まるように見える」「音を立てて息を吸い込む」などの指摘を受けることがある。
簡易スクリーニング方法
エプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale)
以下の状況で「眠くなる可能性」を0~3点で評価します。
0: 全く眠くならない
1: 少し眠くなる
2: 時々眠くなる
3: 非常に眠くなる
■状況
1.座って本を読んでいる
2.テレビを見ている
3.公共の場(映画館、会議室など)で静かに座っている
4.長時間座っている車に乗っている(運転者ではない場合)
5.昼食後に横にならず静かにしている
6.人混みや交通渋滞の中で運転中
7.会話中や静かに座っているとき
合計が10点以上の場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるとされています。
SASを放置するとどうなる?
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放置すると、さまざまな健康リスクが高まることが研究で明らかになっています。
高血圧
SAS患者の約50%が高血圧を合併しているとされています。また、SASを持つ人は高血圧を発症するリスクが2倍になるという報告があります(Peppard PE, et al., 2000)。睡眠中に呼吸が止まるたびに酸素不足が生じ、これが血圧の上昇を引き起こします。
心疾患や脳卒中
SAS患者は心疾患(心筋梗塞や心不全など)の発症リスクが2~3倍に増加します(Somers VK, et al., 2008)。
特に重症のSAS患者では、脳卒中のリスクが約4倍高まると報告されています(Yaggi HK, et al., 2005)。
呼吸が止まることで心臓や脳に酸素が十分に供給されない状態が続き、これが循環器系のトラブルにつながります。
糖尿病
SASと糖尿病には密接な関係があります。SAS患者はインスリン抵抗性が高まり、2型糖尿病を発症するリスクが**30%~50%**高まるとされています(Punjabi NM, et al., 2009)。
日中の眠気と自己リスク
SAS患者の多くは、昼間に極端な眠気を感じます。このため、交通事故を起こすリスクが一般の人よりも2.5倍高いとされています(Tregear S, et al., 2009)。居眠り運転による重大な事故につながる可能性があります。
寿命への影響
重症のSASを治療しない場合、10年間の死亡率が30%以上になるという研究結果があります(Marin JM, et al., 2005)。特に心血管系の病気が原因での死亡リスクが高まる傾向にあります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群を放置することは、高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病、交通事故など、命に関わる深刻なリスクを伴います。具体的なデータが示すように、治療を行うことでこれらのリスクを大幅に軽減できます。健康を守るためにも、早めの検査と治療を受けることが非常に重要です。
いびきをかく人はSASなの?
いびきがある人全員がSASというわけではありません。ただし、大きないびきや息が止まるような症状がある場合は、SASの可能性があります。家族に睡眠中の様子を観察してもらうと、早期発見につながります。
SASの簡易無呼吸検査とは?
簡易無呼吸検査は、自宅で簡単にできる検査です。小さな機械を使って、寝ている間の呼吸や酸素の状態を2晩調べます。保険適応される検査です。お気軽にご相談ください。
SASの治療法
SASの治療には、主に以下の方法があります。
CPAP療法(シーパップ):専用のマスクを使って気道を広げ、呼吸をサポートします。
生活習慣の改善:体重管理やアルコールを控えることが効果的です。
外科的治療:場合によっては手術で治療することもあります。 医師と相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
睡眠時無呼吸症候群と認知症の関連性について
SASとアミロイドβ蓄積の関係
2018年の研究では、認知症のない健康な高齢者208人を対象に、SASの重症度と脳内のアミロイドβ蓄積との関連が調査されました。その結果、SASの重症度が高いほど、髄液中のアミロイドβレベルが上昇することが示されました。これは、SASがアルツハイマー病のリスク因子となり得ることを示唆しています。
SAS患者における軽度認知障害(MCI)の頻度
カナダの研究では、1,084人のSAS患者を対象に認知機能を評価したところ、全体の約48%が軽度の認知機能障害(MoCAスコア<26)を有していることが判明しました。特に、中等度から重度のSAS患者では、その割合が55%以上に達しました。この結果は、SASの重症度が認知機能低下と強く関連していることを示しています。
SASと認知症発症リスクの性差
2024年の研究によれば、50歳以上の18,815人を対象にSASと認知症の発症リスクを調査した結果、80歳までに認知症を発症するリスクは、SASを有する女性で4.7%増加し、男性では2.5%の増加が見られました。このことから、SASが認知症リスクを高める可能性があり、特に女性でその傾向が強いことが示唆されています。
これらの研究結果から、SASは認知機能の低下や認知症のリスク増加と密接に関連していることが分かります。SASの早期診断と適切な治療は、認知症予防の観点からも重要であると考えられます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と脳神経疾患との関係性
脳卒中(脳梗塞・脳出血)との関係
SASは、血中酸素濃度の低下(低酸素血症)や、睡眠中の断続的な呼吸停止による血圧の変動を引き起こします。これにより、動脈硬化や血管へのダメージが進行し、脳卒中のリスクが高まるとされています。特に重度のSASは、脳卒中の再発リスクを高めることが報告されています。
認知症のリスク増加
SASによる慢性的な低酸素状態や睡眠の質の低下が、認知機能の低下に関連している可能性があります。特に、アルツハイマー型認知症や血管性認知症の進行を早める要因となることが指摘されています。SASを適切に治療することで、認知機能の低下を遅らせる可能性が示唆されています。
うつ病や不安障害との関連
SASによる睡眠不足や日中の疲労感が、うつ病や不安障害のリスクを高めることが知られています。特に、中枢神経系への影響が気分障害と深く関連していると考えられています。
てんかんとの関係
SASがてんかん発作を誘発したり、発作を悪化させたりすることがあります。特に、夜間の低酸素状態が脳の興奮性を高め、発作の頻度を増加させる可能性があるとされています。
パーキンソン病への影響
パーキンソン病の患者では、SASが合併していることが多く報告されています。SASは病気の進行を悪化させる可能性があり、日中の疲労感や運動機能の低下を助長することがあります。
予防と治療の重要性
SASの治療(例:CPAP療法や生活習慣の改善)を行うことで、これらの脳神経疾患のリスクを軽減する可能性があります。特に早期診断と適切な治療は、脳へのダメージを最小限に抑えるために重要です。
簡易型睡眠時無呼吸検査

保険診療
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea)は、睡眠中に何度も呼吸が止まる、または浅くなる病気です。これにより、以下のような症状やリスクが生じます。
- いびき: 特に大きないびきをかくことが多いです。
- 日中の眠気: 睡眠の質が低下するため、昼間に強い眠気を感じます。
- 疲労感: 十分に寝ても疲れが取れないことがあります。
- 集中力の低下: 日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
治療せずに放置すると、高血圧、心臓病、糖尿病などのリスクが高まります。早期の診断と治療が重要です。睡眠時無呼吸症候群は治療可能な病気なので、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。当院では、簡易式睡眠時無呼吸検査を受けることができます(保険適用)。
メリット
- 手軽さ: 自宅で普段通りの環境で行えるため、ストレスが少なく、普段の睡眠に近い状態でデータが収集できます。
- 迅速さ: 検査が簡単で迅速に行えます。
簡易式睡眠時無呼吸検査の流れ
STEP1機器の準備
専用の検査機器が貸し出されます。使用方法について説明を受けます。
STEP2装置の装着
自宅で就寝前に、検査装置を体に装着します。鼻に酸素センサー、指先に酸素濃度を測るセンサーを取り付けます。
STEP31晩目の検査
装置を装着したまま普段通りに寝ます。装置が一晩中、呼吸や心拍数、酸素濃度などのデータを記録します。
STEP42晩目の検査
翌日、再び同じように装置を装着して寝ます。2晩目も同様にデータを収集します。
STEP5装置の返却
検査が終了したら、装置を当院に返却します。
STEP6結果の解析
収集されたデータを解析し、無呼吸や低呼吸の回数、程度を評価します。結果説明まで、約10日から2週間ほどお時間をいただきます。検査結果に応じて、治療やさらに詳しい検査を提案することがあります。
注意点
- 装置の装着方法を正しく守ることが重要です。
- 検査中はあまり意識をせず、普段通りの生活を心がけることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の原因
- 気道の閉塞: 喉の筋肉が弛緩し、気道が狭くなることで発生します(閉塞性睡眠時無呼吸)。
- 脳の指令の異常: 脳が呼吸を指示しないことで発生します(中枢性睡眠時無呼吸)。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人
- 肥満: 体重が多いと気道が圧迫されやすくなります。
- 年齢: 年を取るにつれてリスクが高まります。
- 性別: 男性の方が発症しやすいです。
- 喫煙・飲酒: 喉の筋肉が緩みやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群の治療法
- 生活習慣の改善: 減量や禁煙、アルコールの制限などが有効です。
- CPAP療法: 睡眠中に気道を広げるための機械を使用します。
- 手術: 重度の場合、手術で気道を広げることもあります。
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検査の流れ
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